時宗のご本尊・脇侍の種類・選び方
このページでは「時宗」における本尊・脇侍はどのような仏を飾るのかと、時宗の本尊・脇侍の飾り方の知識を深めて頂くためのページです。普段、宗派に関心のない方も、「こんな宗派だったんだ」と知るきっかけになれば嬉しいです。また自身の宗派が分からないという方は「家の宗派を確認する方法」をご覧いただき、自身の宗派を特定してからご覧ください。
そもそも時宗ってどんな宗派?
時宗は、鎌倉時代後期に一遍上人が開かれた宗派で、浄土宗と同じく念仏宗(念仏を唱えることを重要とする宗派)です。一遍上人は、浄土宗西山派の開祖・証空上人の孫弟子にあたり、阿弥陀如来の救いを信じ、「南無阿弥陀仏」を唱えることで、心豊かに生き、死後には極楽浄土に生まれて仏となることができると教えました。また、一遍上人や歴代の遊行上人たちは、念仏の教えを広めるため、全国を巡る「遊行」という布教活動を行いました。そのため、一遍上人ら時宗の僧を「遊行上人」、総本山の清浄光寺を「遊行寺」と呼びます。時宗の大きな特徴として、「踊念仏」が挙げられます。これは念仏を唱えながら踊る儀式で、一遍上人も各地を巡る際に踊念仏を通じて布教を行いました。また、踊念仏は現代の盆踊りの起源ともいわれ、ご先祖様や亡くなった人を供養する意味が込められています。
時宗のご本尊・脇侍
| お仏壇左側真教上人 | お仏壇中央阿弥陀如来(舟立弥陀) | お仏壇右側一遍上人 |
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| 時宗の二祖です。一遍上人が41歳の時、九州を遊行していた一遍上人に出会い、一遍上人の教えに感銘をうけ、最初のお弟子となられました。 | 舟型の光背の前に立った姿の阿弥陀如来像です。お仏壇業界では舟弥陀・舟立弥陀と呼ばれます。阿弥陀如来は直ちに人を救おうとする姿勢のため少し前に傾いています。「南無阿弥陀仏」と唱えたあらゆる人々を必ず極楽浄土へ導くとされています。 | 時宗の開祖です。伊予(愛媛県松山)の名門武士であった河野家の次男として生まれました。信州で踊念仏を始め、南は九州から北は奥羽にいたるまでくまなく遊行し、浄土教を確立された名僧として法然上人・親鸞聖人と並び、称えられています。 |
ご本尊・脇侍の「お仏壇への飾り方」
ご本尊のみで飾る場合
| 掛け軸のみで飾る | 仏像のみで飾る | 仏像+ミニ常花で飾る |
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| ご本尊を掛け軸のみで飾る方法です。仏像に比べて少し略式となりますが、おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 | ご本尊を仏像で飾った例です。仏像で飾ることで存在感があり、お仏壇の存在感が出てきます。 | ご本尊を仏像で飾り、その脇に仏教で重要とされる蓮の花の「ミニ常花」を飾ることで、ご本尊を引き立てるおすすめの飾り方です。 |
ご本尊+脇侍をしっかり飾る場合
| 掛け軸(3尊)で飾る | 仏像+掛け軸(両脇)で飾る | 仏像(3尊)で飾る |
|---|---|---|
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| 掛け軸(3尊)で飾る方法です。3尊飾ることで時宗の教えに、より沿うお飾りとなります。おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 | ご本尊を仏像で飾り、両脇を掛け軸で飾る方法です。仏像で飾ることで存在感があり、また時宗の教えに、より沿うお飾りでとても丁寧な飾り方です。 | ご本尊・両脇侍ともすべて仏像で飾る方法です。最も丁寧な飾り方ですが、残念ながら時宗の場合は数少ない宗派のため両脇侍の仏像が販売されていません。 |
時宗の知識とお参りの作法
総本山
清浄光寺(神奈川県藤沢市)。一遍上人が開いた時宗の中心寺院で、「遊行寺」とも呼ばれます。
主な経典
浄土三部経(『仏説無量寿経』『仏説観無量寿経』『仏説阿弥陀経』)。阿弥陀如来の救いを説いた時宗の根本経典です。
線香の本数
線香は香炉に立てて供えます。
お唱えする言葉
南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)。時宗ではこの言葉を唱え、阿弥陀如来への帰依と感謝を表します。
南無阿弥陀仏とは
南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)は、阿弥陀如来への「帰依します」「お任せします」という信仰と感謝を表す言葉です。
- 南無(なむ):サンスクリット語の「ナモー」に由来し、「帰依する」「頼る」という意味。
- 阿弥陀仏(あみだぶつ):無限の光と命を象徴する仏様で、すべての人を救う存在。
時宗の主な年間行事
1. 修正会(しゅしょうえ)
- 時期:1月1日~1月3日
- 内容:新年を迎え、阿弥陀如来への感謝と念仏を唱える法要です。
- 理由:仏教の教えに立ち返り、新年を清らかな心で迎える伝統的な行事です。
2. 春彼岸会(ひがんえ)
- 時期:3月18日~3月24日(春分の日を中日とする7日間)
- 内容:祖先を偲びつつ、念仏を唱え、仏縁を深める期間です。
- 理由:先祖供養を通じて、阿弥陀如来の教えを再確認する大切な行事です。
3. 盂蘭盆会(うらぼんえ / お盆)
- 時期:7月13日~7月15日(地域によっては8月13日~15日)
- 内容:亡き人を偲び、供養の心で念仏を唱える行事です。
- 理由:「仏恩報謝」の精神を大切にし、阿弥陀如来の教えを深く学ぶ機会とします。
4. 遊行上人御忌法要(ゆぎょうしょうにんぎきほうよう)
- 時期:10月下旬
- 内容:一遍上人のご命日を記念し、全国から参拝者が集う大法要です。
- 理由:時宗の開祖である一遍上人の教えを深く学び、念仏の精神を再確認する行事です。
5. 踊念仏法要(おどりねんぶつほうよう)
- 時期:不定期(各地で開催)
- 内容:念仏を唱えながら踊ることで阿弥陀如来への感謝を表します。
- 理由:一遍上人が各地で布教活動を行った際に踊念仏を取り入れ、現代でもその精神が受け継がれています。








