臨済宗のご本尊・脇侍の種類・選び方

このページでは「臨済宗」における本尊・脇侍はどのような仏を飾るのかと、臨済宗の本尊・脇侍の飾り方の知識を深めて頂くためのページです。普段、宗派に関心のない方も、「こんな宗派だったんだ」と知るきっかけになれば嬉しいです。また自身の宗派が分からないという方は「家の宗派を確認する方法」をご覧いただき、自身の宗派を特定してからご覧ください。

臨済宗妙心寺派の本山「妙心寺」

そもそも臨済宗ってどんな宗派?

臨済宗は、曹洞宗や黄檗宗と並ぶ日本三禅宗の1つで、座禅を中心とした修行を大切にする宗派です。実は「臨済宗」という単一の教団は存在せず、14の派に分かれています。その中で最も多いのが「臨済宗妙心寺派」で、全国に約6,000ある臨済宗寺院のうち、約3,500寺が妙心寺派に属しています。臨済宗は、中国唐代の禅僧・臨済義玄(りんざいぎげん)の教えを基に広まり、室町時代には「一休さん」で有名な一休宗純や夢窓疎石といった名僧を輩出しました。以下では、日本最大の臨済宗派である妙心寺派を中心にその特徴をご紹介します。

臨済宗妙心寺派のご本尊・脇侍

お仏壇左側花園法皇【妙心寺派の場合】 お仏壇中央釈迦如来(座釈迦) お仏壇右側無相大師【妙心寺派の場合】
臨済宗のお仏壇の脇侍の花園法皇【妙心寺派の場合】 臨済宗のお仏壇の本尊の釈迦如来(座釈迦) 臨済宗のお仏壇の脇侍の無相大師【妙心寺派の場合】
花園天皇は鎌倉時代の第95代天皇で、約10年間天皇の位に就いた後に退位され、上皇となりました。その後、仏教に深く帰依して出家し、僧侶となります。出家後は「花園法皇(ほうおう)」と呼ばれました。京都市右京区にある「花園」という地は、花園法皇の離宮があった場所です。法皇はこの離宮を禅寺として改め、これが現在の臨済宗妙心寺派の大本山である妙心寺の始まりです。 仏教の開祖で、おなじみの「お釈迦さま」です。正式名称は座釈迦如来で、お仏壇業界では座釈迦(ざしゃか)と呼ばれます。古代インドの小国、釈迦族の王子で妻や子供もいた実在の人物です。釈迦如来とはその釈迦が悟りを得た際の姿を表しています。地位、財産、家族など一切のものを捨てて出家し、悟りを開いた後の釈迦なので質素な一枚の衣だけを身にまとった姿です。 無相大師(関山慧玄)は、大燈国師(宗峰妙超)のもとで修行し、「慧玄」という名を授かりました。花園法皇が妙心寺を設立する際、大燈国師は「わが国で最も優れた禅僧は関山慧玄」と推薦。これにより、関山慧玄が妙心寺の開山(初代住職)に任じられました。彼の尽力で妙心寺は臨済宗最大の宗派の中心として発展しました。

臨済宗の各派ごとのご本尊・脇侍

現在の臨済宗は14派にわかれ、各派ごとに本山があります。各派によって異なる脇侍(脇侍)と各本山をご紹介いたします。

宗派名 本山 脇侍(左) 本尊 脇侍(右)
臨済宗全般
(各派で飾ることもある)
  普賢菩薩 釈迦如来 文殊菩薩
妙心寺派 妙心寺(京都市) 花園法皇 釈迦如来 無相大師
建長寺派 建長寺(鎌倉市) 大覚禅師 釈迦如来 達磨大師
円覚寺派 円覚寺(鎌倉市) 佛光国師 釈迦如来 達磨大師
南禅寺派 南禅寺(京都市) 大明国師 釈迦如来 達磨大師
方広寺派 方広寺(静岡県浜松市北区) 聖鑑国師 釈迦如来 達磨大師
永源寺派 永源寺(滋賀県東近江市) 正燈国師 釈迦如来 達磨大師
佛通寺派 佛通寺(広島県三原市) 愚中禅師 釈迦如来 達磨大師
東福寺派 東福寺(京都市) 聖一国師 釈迦如来 達磨大師
相国寺派 相国寺(京都市) 普明国師 釈迦如来 達磨大師
建仁寺派 建仁寺(京都市) 栄西禅師 釈迦如来 達磨大師
天龍寺派 天龍寺(京都市) 夢窓国師 釈迦如来 達磨大師
向嶽寺派 向嶽寺(山梨県甲州市) 大円禅師 釈迦如来 達磨大師
大徳寺派 大徳寺(京都市) 大燈国師 釈迦如来 達磨大師
国泰寺派 国泰寺(富山県高岡市) 妙意禅師 釈迦如来 達磨大師

ご本尊・脇侍の「お仏壇への飾り方」

ご本尊のみで飾る場合

掛け軸のみで飾る 仏像のみで飾る 仏像+ミニ常花で飾る
臨済宗の本尊を掛け軸のみで飾るイメージ 臨済宗の本尊を仏像のみで飾るイメージ 臨済宗の本尊を仏像+ミニ常花で飾るイメージ
ご本尊を掛け軸のみで飾る方法です。仏像に比べて少し略式となりますが、おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 ご本尊を仏像で飾った例です。仏像で飾ることで存在感があり、お仏壇の存在感が出てきます。 ご本尊を仏像で飾り、その脇に仏教で重要とされる蓮の花の「ミニ常花」を飾ることで、ご本尊を引き立てるおすすめの飾り方です。

ご本尊+脇侍をしっかり飾る場合

臨済宗妙心寺派の場合掛け軸(3尊)で飾る 臨済宗妙心寺派の場合仏像+掛け軸(両脇)で飾る 臨済宗妙心寺派の場合仏像(3尊)で飾る
臨済宗妙心寺派の本尊を掛け軸(3尊)で飾るイメージ 臨済宗妙心寺派の本尊を仏像+掛け軸(両脇)で飾るイメージ 臨済宗妙心寺派の本尊を仏像(3尊)で飾るイメージ
掛け軸(3尊)で飾る方法です。3尊飾ることで臨済宗妙心寺派の教えに、より沿うお飾りとなります。おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 ご本尊を仏像で飾り、両脇を掛け軸で飾る方法です。仏像で飾ることで存在感があり、また臨済宗妙心寺派の教えに、より沿うお飾りでとても丁寧な飾り方です。 ご本尊・両脇侍ともすべて仏像で飾る方法です。臨済宗妙心寺派の場合は両脇仏に花園法皇と無相大師を飾ります。予算が必要ですが、最も丁寧な飾り方といえるでしょう。
臨済宗全般の場合掛け軸(3尊)で飾る 臨済宗全般の場合仏像+掛け軸(両脇)で飾る 臨済宗全般の場合仏像(3尊)で飾る
臨済宗全般の本尊を掛け軸(3尊)で飾るイメージ 臨済宗全般の本尊を仏像+掛け軸(両脇)で飾るイメージ 臨済宗全般の本尊を仏像(3尊)で飾るイメージ
掛け軸(3尊)で飾る方法です。3尊飾ることで臨済宗の教えに、より沿うお飾りとなります。おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 ご本尊を仏像で飾り、両脇を掛け軸で飾る方法です。仏像で飾ることで存在感があり、また臨済宗の教えに、より沿うお飾りでとても丁寧な飾り方です。 ご本尊・両脇侍ともすべて仏像で飾る方法です。臨済宗の場合は両脇仏に普賢菩薩と文殊菩薩を飾る事があります。予算が必要ですが、最も丁寧な飾り方といえるでしょう。

臨済宗の知識とお参りの作法

総本山

臨済宗は単一の総本山を持たず、14派それぞれに本山があります。中でも「妙心寺」(京都市右京区)は、臨済宗妙心寺派の大本山で、約3,500寺を擁する最大の派です。

主な経典

臨済録、金剛経、般若心経など。特に「臨済録」は、宗祖・臨済義玄(中国唐代の禅僧)の教えを記録した重要な経典です。

線香の本数

線香は1本を香炉に立てて供えるのが一般的です。ただし、寺院や地域によって異なる場合があります。

お唱えする言葉

臨済宗では特定の念仏や真言よりも座禅や禅問答を中心とした修行を重視します。ただし、法要の際には「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」を唱えることがあります。

南無釈迦牟尼仏とは

南無釈迦牟尼仏は、お釈迦様への帰依を表す言葉です。
  • 南無(なむ):サンスクリット語「ナモー」に由来し、「帰依する」「頼る」という意味。
  • 釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ):お釈迦様の正式な尊称で、「釈迦族の聖者」という意味。
この言葉を唱えることで、お釈迦様の教えに感謝し、自らの修行の決意を新たにします。

臨済宗の主な年間行事

1. 修正会(しゅしょうえ)

  • 時期:1月1日〜1月3日
  • 内容:新年を迎え、仏法の加護と無事を祈る法要です。
  • 理由:新たな一年を禅の教えとともに始める伝統行事です。

2. 春彼岸会(ひがんえ)

  • 時期:3月18日〜3月24日(春分の日を中日とする7日間)
  • 内容:先祖供養とともに、禅の修行を深める期間です。
  • 理由:六波羅蜜(ろくはらみつ)を実践し、先祖への感謝を示します。

3. 秋彼岸会(ひがんえ)

  • 時期:9月20日〜9月26日(秋分の日を中日とする7日間)
  • 内容:春彼岸と同様に、先祖供養を行います。
  • 理由:先祖への感謝と修行の場として重視されます。

4. 臨済宗開祖忌(りんざいそうかいそき)

  • 時期:寺院によって異なる
  • 内容:臨済義玄を偲び、その教えを深く学ぶ法要です。
  • 理由:臨済宗の精神を再確認し、修行を深める機会です。

5. 盂蘭盆会(うらぼんえ / お盆)

  • 時期:7月13日〜15日(または8月)
  • 内容:先祖の霊を供養し、墓参りを行います。
  • 理由:阿弥陀仏の慈悲を感謝し、先祖供養を行う重要な行事です。

6. 成道会(じょうどうえ)

  • 時期:12月8日
  • 内容:お釈迦様が悟りを開いた日を記念する法要です。
  • 理由:仏教の教えに立ち返り、感謝の心を深める行事です。