真言宗(新義真言宗)のご本尊・脇侍の種類・選び方

このページでは「真言宗(新義真言宗)」における本尊・脇侍はどのような仏を飾るのかと、真言宗の本尊・脇侍の飾り方の知識を深めて頂くためのページです。普段、宗派に関心のない方も、「こんな宗派だったんだ」と知るきっかけになれば嬉しいです。また自身の宗派が分からないという方は「家の宗派を確認する方法」をご覧いただき、自身の宗派を特定してからご覧ください。

新義真言宗の総本山「智積院・長谷寺」

そもそも真言宗(新義真言宗)ってどんな宗派?

真言宗は、社会科の教科書にも登場する弘法大師(空海)を開祖とする宗派です。真言宗は「古義真言宗」「新義真言宗(智山派・豊山派)」「真言律宗」の3つに大別されます。寺院数の割合としては古義真言宗(約60%)、新義真言宗(約35%)、真言律宗(約5%)くらいの割合です。本ページは「新義真言宗(約35%)」の方に向けたページです。新義真言宗は、平安時代末期から鎌倉時代に興教大師(覚鑁)によって確立された真言宗の一派です。従来の高野山や東寺を中心とする古義真言宗に対し、覚鑁が根来山(和歌山県)を拠点に教義を発展させました。現在、新義真言宗は智山派(総本山:智積院、京都市)と豊山派(総本山:長谷寺、奈良県)の二派に分かれ、全国に多くの寺院と信徒を持つ宗派として知られています。

新義真言宗のご本尊・脇侍(基本的には古義真言宗と同じ)【約8割の真言宗寺院】

新義真言宗では、仏壇の脇侍として、約8割の家庭が以下の組み合わせを用いることが多く、これは古義真言宗と共通しています。特に左側には「不動明王」を祀るケースが一般的です。

お仏壇左側不動明王 お仏壇中央大日如来 お仏壇右側弘法大師(空海)
真言宗のお仏壇の脇侍の不動明王 真言宗のお仏壇の本尊の大日如来 真言宗のお仏壇の脇侍の弘法大師(空海)
密教特有の尊格である明王の一尊。大日如来の化身とも言われています。怖い様相から「戦いの仏」と思われがちですが、迷いの世界から煩悩を断ち切るよう導いてくれる仏です。左手にもつ剣は大日如来の智慧の鋭さを表現し、右手の羂索は煩悩を縛り、悪の心を改心させる捕縛用の縄です 大日如来は空海が日本に伝えた「密教」では最高の位にいる仏様とされ、大日如来は宇宙の真理を現し、宇宙そのものを指します。すべての命あるものは大日如来から生まれたとされ、すべての仏様(釈迦如来や阿弥陀如来etc)は大日如来が姿を変えたものであるというのが真言宗の教えです。 空海は、平安時代の初めに活躍した歴史の教科書にも登場する程、有名な僧侶です。「密教」という新しい仏教を学ぶために、遣唐使で唐(中国)に渡りました。この「密教」とは大日如来を敬う教えで、呪文を唱えたりする厳しい修行を行います。空海は、この密教をマスターし、日本で真言宗として布教しました。

真言宗のご本尊・脇侍(左に興教大師)【約2割の真言宗寺院】

新義真言宗特有の色合いを反映した本尊と脇侍の構成で、特に智山派や豊山派において推奨される場合があります。左側には「興教大師(覚鑁)」を祀るケースがあります。迷われた場合は各寺院に聞いてみて下さい。

お仏壇左側興教大師(覚鑁) お仏壇中央大日如来 お仏壇右側弘法大師(空海)
新義真言宗のお仏壇の脇侍の興教大師(覚鑁) 新義真言宗のお仏壇の本尊の大日如来 新義真言宗のお仏壇の脇侍の弘法大師(空海)
真言宗の中興の祖ともいわれる興教大師の覚鑁(かくばん)を脇侍に飾ることがあります。(※寺院によって)興教大師は平安末期の僧侶で、高野山の座主を務めていました。空海以来の秀才と言われるほどの僧侶でした。当時、荒廃していた高野山で争いが盛んになり、高野山を下りて根来寺を開山し、真言密教を復興させるために多くの真言僧侶の育成に尽くされました。 大日如来は空海が日本に伝えた「密教」では最高の位にいる仏様とされ、大日如来は宇宙の真理を現し、宇宙そのものを指します。すべての命あるものは大日如来から生まれたとされ、すべての仏様(釈迦如来や阿弥陀如来etc)は大日如来が姿を変えたものであるというのが真言宗の教えです。 空海は、平安時代の初めに活躍した歴史の教科書にも登場する程、有名な僧侶です。「密教」という新しい仏教を学ぶために、遣唐使で唐(中国)に渡りました。この「密教」とは大日如来を敬う教えで、呪文を唱えたりする厳しい修行を行います。空海は、この密教をマスターし、日本で真言宗として布教しました。

ご本尊・脇侍の「お仏壇への飾り方」

下記は参考までに「興教大師(覚鑁)」を祀るverでご説明します。不動明王verは「真言宗」のページをご覧ください。

ご本尊のみで飾る場合

掛け軸のみで飾る 仏像のみで飾る 仏像+ミニ常花で飾る
新義真言宗の本尊を掛け軸のみで飾るイメージ 新義真言宗の本尊を仏像のみで飾るイメージ 新義真言宗の本尊を仏像+ミニ常花で飾るイメージ
ご本尊を掛け軸のみで飾る方法です。仏像に比べて少し略式となりますが、おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 ご本尊を仏像で飾った例です。仏像で飾ることで存在感があり、お仏壇の存在感が出てきます。 ご本尊を仏像で飾り、その脇に仏教で重要とされる蓮の花の「ミニ常花」を飾ることで、ご本尊を引き立てるおすすめの飾り方です。

ご本尊+脇侍をしっかり飾る場合

掛け軸(3尊)で飾る 仏像+掛け軸(両脇)で飾る 仏像(3尊)で飾る
新義真言宗の本尊を掛け軸(3尊)で飾るイメージ 新義真言宗の本尊を仏像+掛け軸(両脇)で飾るイメージ 新義真言宗の本尊を仏像(3尊)で飾るイメージ
掛け軸(3尊)で飾る方法です。3尊飾ることで新義真言宗の教えに、より沿うお飾りとなります。おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 ご本尊を仏像で飾り、両脇を掛け軸で飾る方法です。仏像で飾ることで存在感があり、また新義真言宗の教えに、より沿うお飾りでとても丁寧な飾り方です。 ご本尊・両脇侍ともすべて仏像で飾る方法ですが、興教大師の仏像は仏壇業界では販売していない事が多い為、飾ることができません。

新義真言宗の知識とお参りの作法

総本山

  • 智山派:智積院(京都府京都市東山区)
  • 豊山派:長谷寺(奈良県桜井市)
新義真言宗は、この2つの総本山を中心に全国に広がっています。

主な経典

「大日経」「金剛頂経」「蘇悉地経」など。これらは密教の根本経典であり、大日如来の教えを伝える新義真言宗の重要な経典です。

線香の本数

線香は正式には3本ずつ供えます。香炉の中で逆三角形に立て、1本を手前、2本を奥側に供えるのが基本です。地域や寺院の指導によって異なる場合があります。

古義真言宗、新義真言宗の違いについて

真言宗は、空海(弘法大師)が開いた密教の教えを基に発展しました。興教大師(覚鑁)が古義真言宗から分かれ、根来山(和歌山県)を中心に新義真言宗を確立しました。

教義の違い

  • 古義真言宗:本地身説法(大日如来が直接説法を行う)
  • 新義真言宗:加持身説法(大日如来が説法のために加持身を現す)
寺院数の割合は、古義真言宗(約60%)、新義真言宗(35%)、真言律宗(5%)です。

お唱えする言葉

新義真言宗では、「南無大師遍照金剛(なむたいしへんじょうこんごう)」や「オン バザラ ダトバン」などの真言を唱えます。これらの言葉は、仏や諸尊への祈りや帰依を表します。

真言とは

真言は、仏や諸尊の力を借りて修行や祈りを行うための神秘的な言葉です。
  • 真言(しんごん):サンスクリット語「マントラ」に由来し、「真理の言葉」を意味します。
  • 「オン バザラ ダトバン」:大日如来に帰依する意味を持つ代表的な真言。
この言葉を唱えることで、仏法の力を感じ、自らの修行を深めるとされています。

新義真言宗の主な年間行事

1. 修正会(しゅしょうえ)

  • 時期:1月1日~1月3日
  • 内容:新年を迎え、大日如来や興教大師への感謝を込めて祈る法要です。
  • 理由:新たな一年を仏法の教えに立ち返って始める伝統的な行事です。

2. 春彼岸会(ひがんえ)

  • 時期:3月18日~3月24日(春分の日を中日とする7日間)
  • 内容:先祖供養を中心に、大日如来の教えに基づき六波羅蜜を実践し、現世と来世の安寧を祈る法要です。
  • 理由:先祖供養と自己修行を行う大切な期間です。

3. 弘法大師御影供(みえく)

  • 時期:3月21日
  • 内容:弘法大師の遺徳を偲び、祈りを捧げる重要な法要です。
  • 理由:弘法大師と興教大師の教えを再確認し、その精神を深く学ぶ行事です。

4. 盂蘭盆会(うらぼんえ / お盆)

  • 時期:7月13日~15日(または8月)
  • 内容:先祖や故人を供養し、大日如来の慈悲を祈ります。
  • 理由:先祖供養を通じて感謝の心を育む機会です。

5. 秋彼岸会(ひがんえ)

  • 時期:9月20日~9月26日(秋分の日を中日とする7日間)
  • 内容:春彼岸と同様に、先祖供養や六波羅蜜の実践を通じて修行を深める法要です。
  • 理由:仏教の教えに基づき、先祖や現世の安寧を祈る重要な行事です。

6. 成道会(じょうどうえ)

  • 時期:12月8日
  • 内容:お釈迦様が悟りを開いた日を記念する法要です。
  • 理由:仏教の教えを再確認し、感謝の心を深める機会です。

7. 灌頂会(かんじょうえ)

  • 時期:寺院によって異なる
  • 内容:密教の教えを受け継ぐための重要な儀式です。
  • 理由:弟子が仏法を継承し、真言密教の道を深める機会です。

8. 開山忌(かいさんき)

  • 時期:寺院によって異なる
  • 内容:それぞれの寺院を開いた祖師を偲び、その功績を称える法要です。
  • 理由:寺院の歴史や教えに感謝する機会です。