真言宗のご本尊・脇侍の種類・選び方

このページでは「真言宗」における本尊・脇侍はどのような仏を飾るのかと、真言宗の本尊・脇侍の飾り方の知識を深めて頂くためのページです。普段、宗派に関心のない方も、「こんな宗派だったんだ」と知るきっかけになれば嬉しいです。また自身の宗派が分からないという方は「家の宗派を確認する方法」をご覧いただき、自身の宗派を特定してからご覧ください。

真言宗の総本山「金剛峯寺」

そもそも真言宗ってどんな宗派?

真言宗は、社会科の教科書にも登場する弘法大師(空海)を開祖とする宗派です。「真言密教」とも呼ばれ、密教の修行を通じて誰でもすぐに仏になれるという「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」を教えの中心としています。現在、真言宗には16の主要派があり、18の総本山・大本山が「真言十八本山」として知られています。これらには、高野山金剛峯寺(和歌山県)や京都の東寺(教王護国寺)などが含まれます。さらに真言宗は、「古義真言宗」「新義真言宗(智山派・豊山派)」「真言律宗」の3つに大別されます。寺院数の割合としては古義真言宗(約60%)、新義真言宗(約35%)、真言律宗(約5%)くらいの割合です。本ページは「古義真言宗(約60%)」の方に向けたページです。

真言宗のご本尊・脇侍

お仏壇左側不動明王 お仏壇中央大日如来 お仏壇右側弘法大師(空海)
真言宗のお仏壇の脇侍の不動明王 真言宗のお仏壇の本尊の大日如来 真言宗のお仏壇の脇侍の弘法大師(空海)
密教特有の尊格である明王の一尊。大日如来の化身とも言われています。怖い様相から「戦いの仏」と思われがちですが、迷いの世界から煩悩を断ち切るよう導いてくれる仏です。左手にもつ剣は大日如来の智慧の鋭さを表現し、右手の羂索は煩悩を縛り、悪の心を改心させる捕縛用の縄です 大日如来は空海が日本に伝えた「密教」では最高の位にいる仏様とされ、大日如来は宇宙の真理を現し、宇宙そのものを指します。すべての命あるものは大日如来から生まれたとされ、すべての仏様(釈迦如来や阿弥陀如来etc)は大日如来が姿を変えたものであるというのが真言宗の教えです。 空海は、平安時代の初めに活躍した歴史の教科書にも登場する程、有名な僧侶です。「密教」という新しい仏教を学ぶために、遣唐使で唐(中国)に渡りました。この「密教」とは大日如来を敬う教えで、呪文を唱えたりする厳しい修行を行います。空海は、この密教をマスターし、日本で真言宗として布教しました。

ご本尊・脇侍の「お仏壇への飾り方」

ご本尊のみで飾る場合

掛け軸のみで飾る 仏像のみで飾る 仏像+ミニ常花で飾る
真言宗の本尊を掛け軸のみで飾るイメージ 真言宗の本尊を仏像のみで飾るイメージ 真言宗の本尊を仏像+ミニ常花で飾るイメージ
ご本尊を掛け軸のみで飾る方法です。仏像に比べて少し略式となりますが、おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 ご本尊を仏像で飾った例です。仏像で飾ることで存在感があり、お仏壇の存在感が出てきます。 ご本尊を仏像で飾り、その脇に仏教で重要とされる蓮の花の「ミニ常花」を飾ることで、ご本尊を引き立てるおすすめの飾り方です。

ご本尊+脇侍をしっかり飾る場合

掛け軸(3尊)で飾る 仏像+掛け軸(両脇)で飾る 仏像(3尊)で飾る
真言宗の本尊を掛け軸(3尊)で飾るイメージ 真言宗の本尊を仏像+掛け軸(両脇)で飾るイメージ 真言宗の本尊を仏像(3尊)で飾るイメージ
掛け軸(3尊)で飾る方法です。3尊飾ることで真言宗の教えに、より沿うお飾りとなります。おしゃれな掛け軸などもありますのでシンプルなデザインにすることもできます。 ご本尊を仏像で飾り、両脇を掛け軸で飾る方法です。仏像で飾ることで存在感があり、また真言宗の教えに、より沿うお飾りでとても丁寧な飾り方です。 ご本尊・両脇侍ともすべて仏像で飾る方法です。予算が必要ですが、最も丁寧な飾り方といえるでしょう。

真言宗の知識とお参りの作法

総本山

高野山金剛峯寺(和歌山県伊都郡高野町)。平安時代に弘法大師(空海)によって開かれた真言宗の中心寺院です。

主な経典

「大日経」「金剛頂経」「蘇悉地経」など。密教の根本経典で、真言宗の教えの中心となります。

線香の本数

線香は正式には3本ずつ供えます。また立て方にも決まりがあり香炉のなかで逆三角形に置くのがポイントです。折らずに1本を手前、残りの2本を仏壇側に供えます。

古義真言宗、新義真言宗の違いについて

真言宗は、弘法大師(空海)が平安時代に開いた密教の教えを伝える宗派ですが、空海の没後、高野山の金剛峯寺と京都の東寺(教王護国寺)を中心にいくつかの門流に分かれました。その中で、興教大師(覚鑁:かくばん)以前の高野山や東寺を中心とする流れが古義真言宗と呼ばれ、興教大師以降に根来山(和歌山県)を拠点として展開した流れが新義真言宗と呼ばれます。寺院数の割合としては古義真言宗(約60%)、新義真言宗(35%)、真言律宗(5%)くらいの割合です。古義真言宗と新義真言宗で脇侍が変わる事があります。

お唱えする言葉

真言宗では、「南無大師遍照金剛(なむたいしへんじょうこんごう)」や「オン バザラ ダトバン」といった真言を唱え、仏や諸尊への祈りを表します。

真言とは

真言とは、仏や諸尊の力を借りて修行や祈りを行うための神秘的な言葉です。
  • 真言(しんごん):サンスクリット語の「マントラ」に由来し、「真理の言葉」という意味。
  • 「オン バザラ ダトバン」:大日如来に帰依する意味を持つ代表的な真言。
この言葉を唱えることで、仏法の力を感じ、自らの修行を深めるとされています。

真言宗の主な年間行事

1. 修正会(しゅしょうえ)

  • 時期:1月1日~1月3日
  • 内容:新年を迎え、大日如来や弘法大師への感謝を込めて祈る法要です。
  • 理由:新たな一年を仏法の教えに立ち返って始める伝統的な行事です。

2. 春彼岸会(ひがんえ)

  • 時期:3月18日~3月24日(春分の日を中日とする7日間)
  • 内容:先祖供養を中心に、大日如来の教えに基づき六波羅蜜を実践し、現世と来世の安寧を祈る法要です。
  • 理由:先祖供養と自己修行を行う大切な期間です。

3. 弘法大師御影供(みえく)

  • 時期:3月21日
  • 内容:弘法大師の遺徳を偲び、祈りを捧げる重要な法要です。
  • 理由:弘法大師の教えを再確認し、その精神を深く学ぶ行事です。

4. 盂蘭盆会(うらぼんえ / お盆)

  • 時期:7月13日~15日(または8月)
  • 内容:先祖や故人を供養し、大日如来の慈悲を祈ります。
  • 理由:先祖供養を通じて感謝の心を育む機会です。

5. 秋彼岸会(ひがんえ)

  • 時期:9月20日~9月26日(秋分の日を中日とする7日間)
  • 内容:春彼岸と同様に、先祖供養や六波羅蜜の実践を通じて修行を深める法要です。
  • 理由:仏教の教えに基づき、先祖や現世の安寧を祈る重要な行事です。

6. 成道会(じょうどうえ)

  • 時期:12月8日
  • 内容:お釈迦様が悟りを開いた日を記念する法要です。
  • 理由:仏教の教えを再確認し、感謝の心を深める機会です。

7. 灌頂会(かんじょうえ)

  • 時期:寺院によって異なる
  • 内容:密教の教えを受け継ぐための重要な儀式です。
  • 理由:弟子が仏法を継承し、真言密教の道を深める機会です。

8. 開山忌(かいさんき)

  • 時期:寺院によって異なる
  • 内容:それぞれの寺院を開いた祖師を偲び、その功績を称える法要です。
  • 理由:寺院の歴史や教えに感謝する機会です。