「繰り出し位牌」という仏具をご存じでしょうか。実は当店にご相談にいらっしゃるお客様の多くが、この存在自体をご存じありません。恥ずかしながら私自身も仏壇店に勤め始めるまでは知らなかった仏具のひとつです。
今回は現場で数多くのお客様と接してきた経験をもとに、「繰り出し位牌はいつから作るべきなのか」「最初から作ってもよいのか」「四十九日との関係」「魂入れの進め方」など、皆様が疑問に思われやすいポイントを順番に解説していきます。宗派や地域、菩提寺の考え方によって扱いが異なる部分もありますので、最終的な判断は必ず菩提寺にご確認いただくことをおすすめします。
繰り出し位牌とは?基本をおさらい

繰り出し位牌(回出位牌)とは、複数のご先祖様の戒名・没年月日・俗名などを記した木の札板を、ひとつの位牌の中にまとめて収納できる仏具です。通常のお位牌(板位牌・札位牌)が1人(またはご夫婦)につき1本必要になるのに対し、繰り出し位牌であれば1つの位牌の中に数枚〜十数枚の札板を重ねて収めることができるため、お仏壇内のスペースを大きく節約できます。
形状は、伝統型タイプや、シンプルな唐木・モダンタイプなど様々です。中に納める札板の順番を入れ替えながら、祥月命日や法要の際に該当する方の札板を手前に出してお祀りする、という使い方をします。
繰り出し位牌はいつから作る?タイミングの目安

本来は33回忌・50回忌などの弔い上げ後にまとめるための位牌だった
もともと繰り出し位牌は、33回忌や50回忌といった「弔い上げ」を終えたご先祖様のお位牌を1つにまとめるための仏具でした。弔い上げとは、故人様への個別の年忌法要を終え、以降は「ご先祖様」として大きくお祀りしていく区切りの法要のことです。この考え方に基づけば、繰り出し位牌を用意するのは弔い上げを迎えたタイミング、というのが本来の姿になります。
現代ではお仏壇の小型化により早いタイミングで作るのが一般的に
現代では、33回忌や50回忌などの節目を待つのではなく、「お仏壇にお位牌を置くスペースがなくなったタイミング」で繰り出し位牌を作成するのが一般的になっています。これは住宅事情の変化により、お仏壇そのものが小型化する傾向にあることが背景にあります。その結果、弔い上げを待たずとも、お位牌を安置できるスペースが先に埋まってしまうケースが非常に増えました。
「弔い上げをしていないご先祖様を繰り出し位牌にまとめてもよいのか」と不安に思われる方も多いのですが、これは省スペース化のニーズが高まった時代背景の変化によるものであり、決して不自然なことではありません。年忌法要の予定やお仏壇の残りスペースを見ながら、無理のないタイミングで検討していただければ大丈夫です。
四十九日法要の際の本位牌を最初から「繰り出し位牌」で作ってもいい?

「増えてから作るのが一般的なら、最初から繰り出し位牌にしてしまってもいいのでは」と考える方も少なくありません。この点について当店では、「正直、一般的ではないものの、菩提寺と家族内でのご了承があれば作ることは可能」という認識を持っています。
なぜなら、省スペースにまとめておくことは、残される側にとっても、将来お仏壇を継承していく側にとってもメリットがあるからです。お仏壇のサイズが小さめの場合や、将来的にお位牌を増やしていく予定がある場合には、あらかじめ繰り出し位牌を選んでおくという判断も十分に考えられます。
一方で、地域や宗派によっては「新しい仏様にはまず通常のお位牌(本位牌)をお作りし、その後に繰り出し位牌へまとめる」という考え方を大切にされているお寺も多くあります。また、日本に根付く文化という観点からも、それが一般的とされています。最初から繰り出し位牌にしてよいかどうかは、入魂をしていただく菩提寺へ一言ご相談いただくと安心です。
繰り出し位牌の魂入れ(開眼供養)はどうする?

繰り出し位牌を新しく作成した際は、菩提寺による「魂入れ(開眼供養)」を行い、あわせて今まで使用していた古いお位牌の「魂抜き(閉眼供養)」とお焚き上げをお願いするのが一般的です。魂入れを行うことで、単なる木製の器から「手を合わせてお参りする対象」へと意味合いが変わるとされています。
魂入れのタイミングとしては、近く年忌法要が予定されている場合や、お盆・お彼岸などで菩提寺のご住職がご自宅に来られる機会に合わせてお願いするのが、日程的にも負担が少なくおすすめです。すでに菩提寺とのお付き合いがある方は、まずはそのタイミングで一言ご相談してみてください。
一方で、菩提寺とのお付き合いがない、あるいは何をどう依頼すればよいか分からないという方もいらっしゃると思います。その場合は、魂入れの手配まで含めて当店にご相談いただくことも可能です。古いお位牌の扱いも含めて、無理のない形で進められるようサポートいたします。
まとめ
繰り出し位牌は本来、33回忌や50回忌などの弔い上げを終えたご先祖様をまとめるための仏具でしたが、現代ではお仏壇の小型化に伴い、スペースが足りなくなったタイミングで作成するのが一般的になっています。
繰り出し位牌を最初から作ることも菩提寺とご家族の了承があれば選択肢になり得ます。作成後は菩提寺による魂入れ・魂抜きの手配が必要になりますので、年忌法要やお盆などのタイミングを活用しながら、無理なく準備を進めていただければと思います。ご不明な点があれば、菩提寺への確認とあわせて、当店へもお気軽にご相談ください。








